アンフェタミン
最終更新: 2025-07-01
概要
アンフェタミン(英: Amphetamine)は、中枢神経刺激薬に分類される化学物質で、覚醒作用、集中力向上、食欲抑制などの作用を持つ。もともとはナルコレプシーやADHD(注意欠如・多動症)などの治療薬として使用されていたが、その強い依存性・乱用性から、多くの国で規制対象となっている。アンフェタミン誘導体(メタンフェタミン、MDMAなど)も含めて、覚醒剤として非合法に流通するケースが多い。
症状
少量では覚醒感、集中力の上昇、気分高揚、食欲低下などが見られるが、用量が増すにつれて不眠、不安、焦燥、動悸、血圧上昇、錯乱、幻覚、攻撃性などが出現する。さらに高用量ではけいれん、脳出血、高体温、心停止、致死のリスクがある。慢性的な使用では耐性形成、強迫的使用、精神病様症状(アンフェタミン精神病)が生じやすくなる。
作用機序
アンフェタミンは、ドーパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)、セロトニン(5-HT)の再取り込みを阻害するとともに、シナプス小胞からの放出を促進することで、脳内のモノアミン濃度を急激に上昇させる。特に報酬系(側坐核)におけるドーパミン増加が、快感や依存性の中核とされる。また、覚醒・注意・運動制御に関与する前頭葉や視床下部などを刺激することで、集中力や活動性が増す。
治療
急性中毒の際には、体温、血圧、心拍数の管理が最優先である。高体温には冷却処置を行い、過度の興奮やけいれんにはベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパムなど)が有効。幻覚や重度の精神症状には抗精神病薬が用いられる場合もある。
慢性的な依存症に対しては、精神療法(認知行動療法など)と社会的支援が中心となるが、現在のところアンフェタミン依存に対する特効薬(抗依存薬)は存在しない。長期間にわたる断薬サポートが必要とされる。